レアルマドリードのある生活

レアルマドリードの応援日記。試合中心にお送りします。

リーガ・エスパニョーラ第31節 vアトレティコ

いまや珍しくなくなった昼間の試合だが、デルビーとなると、まだちょっと違和感が残る。

■マドリーの先発メンバー

GK:ケイラー・ナバス

DF:カルバハル、ペペ、セルヒオ・ラモス、マルセロ

MF:カゼミロ;モドリッチ、クロース

FW:ベイル、ベンゼマロナウド

67分:ペペ→クロース、76分:クロース→イスコ、81分:ベイル→ルーカス・バスケス

お馴染みの11人。

アトレティコの先発メンバー

GK:オブラク

DF:フアンフラン、サビッチ、ゴディン、フィリペ・ルイス

MF:コケ、ガビ;サウール、カラスコ

FW:トーレス、グリースマン

62分:サウール→コレア、78分:トーレス→トーマス、88分:カラスコヒメネス

熾烈な3位争いのアトレティコ。序盤を考えればよくここまで盛り返したという印象。

■両者の変質

序盤からマドリーがボールを持つ展開なのは、これまでのアトレティコ戦同様。ただ、何をやっても点を取れなさそうというような印象は以前ほどはなくなってきている。これについては、マドリーが改善したというよりは、アトレティコが落ちてきたと捉える方が正しいように思われる。

ブロックの形成は相変わらずの早さだったが、不用意なボールロストも見受けられ、慌しい守備となることが何度か。こうしたことが前半のうちから起こることは、シメオネ体制初期の対戦では考えられなかった。

また、何より局面での激しさがなく、中盤でボールを運ぶのに苦労するといったことが減った。規律が取れたブロックの守備と局面での激しさの両立はなくなってしまったようだった。

それが、「サイクルの終焉」というようなものなのか、単純に疲労によるものなのかはわからない。だが、苦手意識はあるにせよ、マドリーから見れば随分とやりやすくなったということは間違いない。

対するマドリーは、どこで攻撃のスピードを上げるかという点において、以前よりはっきりしなくなってきている。

少し前までは、左で作ってクロースのサイドチェンジで右サイドのスペースを使うのが定石だった。左サイドの狭いところも苦にしないマルセロ、最後をしとめられるロナウドがいることで左に守備が寄ってしまうので、わかっていてもスペースを使われる、守備にとっては厳しい形。

カゼミロがピボーテの位置に入り、クロースがインテリオールとして前後に動くようになったことで、このシンプルだが効果的な形を使う頻度が下がった。

クロース個人としては、元々トップ下ということもあって、こういう動きの方がやりやすい面もあるのだろう。しかし、その分ボールを保持しての遅い攻めの中で、スピードアップを図る引き金のありかを見失ってしまっている状態にある。

これはカウンターについても同様。

さすがに大きな試合ではマドリーも守備ブロックの形成をそこそこサボらない(あくまでも”そこそこ”ではあるが)ので、相手の攻撃を受け止めることはできる。

そこから、カウンターにどう繋げていくかが以前よりもぼやけてしまっていて、脅威となり得る速攻を見せられずにいた。

マドリーは攻撃の威力を見せることで守備の負担を減じないと、ただ不安定な守備だけが残るということになってしまう。変な奪われ方はしたくないと慎重にさせることが出来ないと、守備は辛くなってしまう。

さらにこの試合に限っては、普段のような単純なクロスをあまり使わなかった。

アトレティコならほとんどの場合容易に跳ね返されるだろうし、そこからのカウンターに注意したのかもしれない。また、こういう重要な試合で面白みのない攻撃に終始することへの抵抗もあったのかもしれない。

原因は推測するしかないが、ともかく、良くも悪くもシンプルに強みを生かす形を封印したことで、さらに攻撃の手数を要することになった。

ベンゼマは比較的良くボールを触っており、組み立てはまずまずだったが、アタッキングサードでシュートに至る一番の形が使われなかったことで、結局はボールがアトレティコ守備陣の表面をうろうろすることになってしまった。

一番のチャンスはロナウドのシュートがサビッチにクリアされた場面。防がれたものの、こういった速攻を狙う守備が理想。

■せっかくのゴールも・・・

後半に入っても流れは前半と同様。どちらかと言えばマドリーの方にジダンの鞭が入ったようで、後半立ち上がりの動きは良かったが、「何となく良い雰囲気」からゴールを決められるような場面を効果的に生み出すことが出来ないままだった。

こうなると、アトレティコにチャンスが来るのが試合の常。序盤の勢いは徐々に消え、拮抗した中からピンチも出てきたが、得点は許さず。このあたりで仕留めてリードを得るとアトレティコの形だが、そうならなかったことにも関係の変化が見て取れる。

そこで武器となるのがセットプレー。

52分、クロースのボールにペペが合わせて、マドリーが先制した。

いつもの形である。違いは決めたのがストライカーのセルヒオ・ラモスではなくペペだったことくらい。流れの中では何とも動きが出ない展開で、関係なくゴールに繋がるのが今シーズンのセットプレー。

ここからどう試合を進めていくか。

流れに乗って一気呵成に、となる相手ではない。そうなると、しっかり守ってカウンターを狙うのが定石となる。

その時に、前述の通りマドリーがカウンターへの糸口を見失っていることが大きなデメリットになってしまう。攻めたいが、速攻を受けて2点差になることは避けようと慎重にさせることができなければ、アトレティコは人数をかけて攻めることができる。カゼミロの両脇を狙ってサイドへ、という形をきちんと狙えるようになると、マドリーは苦しむことになってしまうのだった。

まして時間はまだまだ残されているところ。ここから今のマドリーがカウンターを見せることなくゴール前にバスを止めて凌ぎきる展開は想像しづらかった。

この時、マドリーの採り得る変化としてははっきり守備に力を割くか、縦の速さを見せられるようにするかのどちらかとなる。

前者であれば、例えばナチョをモドリッチかクロースと替えてペペを中盤に置くといった方法が考えられるが、ペペの負傷によりこの可能性は潰えていた。

後者の場合は、中盤ならコバチッチ、前線ならモラタといったところ。ベンゼマを下げるとポストに入れるプレーヤーがいなくなるが、中盤から一気の展開ならそれも考えるべき選択肢だっただろう。

ジダンの選択はクロースをイスコと交代。イスコは良いプレーをしているし、序列からいけば間違いではないのだが、この場面ではちょっとやりづらい。守備の改善も図れず、かといって攻撃にもあまり関与できない交代となってしまった。

本来であれば、ここでルーカス・バスケスがより重要な役割を担ってくれるはずだった。単なる守備固めとしてではなく、走力を生かして守備から攻撃に転じる形を作ることに貢献してくれる存在となれるはずのプレーヤーである。

しかし、ボールを持ってのプレーの精度の低さがはっきりしており、現状では攻撃に何らかの形で寄与してくれるイメージがもてない。ただ良く走るだけではチームとしての守備はあまり改善しないし、攻撃の脅威を増すことも出来ないのだ。

現状なら、速さはなくとも以前より守備もするようになったハメスの方が、ボールを持って変化を付けられるという点で上回っているようにも思われる。

ハメスの頑張りもあるが、出場経験が増えているにも関わらず、逆にできる仕事が少なくなっていて、バスケスがこうした試合でのカードとして弱くなっていることが非常に残念。

85分、アトレティコが同点に追いつく。

ベンゼマが寄せられなかったことから、高い位置で少しずれが生じ、バイタルでスペースを得たコレアがグリースマンにラストパス。ナバスの飛び出しもまずく、空いていたニアサイドにグリースマンがしっかり決めた。

前線がきちんと守ってくれる計算が立たないことはわかっているので驚きはないし、再三触れてきたように守備のみの強さがあるわけではないので、バイタルに入られた形、そこからシュートに至る流れは、十分にあり得たものが実際に起こっただけと言える。

だが、気持ちとしては非常に悲しい。

そうなると思われるものを超えていくのがマドリーのはずなのに、悪い予想通りにやられてしまうこと、交代をはじめジダンの采配でも、ピッチでのプレーでも、この結末を避けることはできたはずなのに、誰もそれをできなかったことが切ない。

僅かな違いが大きな差を生むという当たり前の認識を新たにできなければ、今シーズン何も勝ち取れないままに終わってしまう。戦術ではなく、意識づけの部分でメリットが大きいはずのジダンが監督であってさえ、こういう形で勝ち点を失うチームになってしまっていることに、危機感を持つ必要があるだろう。

■最後に少し

バルセロナがマラガに敗れたことで、結果として痛手は少なく済んだ。

だが、これでCL連覇など成せるはずもないし、リーガもバルセロナバレンシア、セビージャ、アウェイでのデポルティーボ、マラガという試合が残っていて不安が大きい。

素晴らしいプレーは今は高望み。まずは結果を出せるだけの強度のあるプレーを続けてほしい。