今シーズンこれまでで最も注目された試合。結果はバルセロナの大勝となり、バルセロナとの差を感じるものとなったが、いろいろと振り返る。
■両チームの先発メンバー
・マドリーの交代 46分:エジル→ラス、59分:マルセロ→アルベロア
・バルセロナの交代 75分:ビジャ→ボヤン、86分:シャビ→ケイタ、86分:ペドロ→ジェフレン
イグアインはやはり先発できず。その他は戦前の報道通り。バルセロナも問題なくベストといえる11人をピッチに並べた。
■「バルサ対策なし」の意味
マドリーのプランは、ラインを高くして中盤をコンパクトにし、ここでプレスをかけて速攻へ、というもの。要するに、これまで通りの今シーズンのスタイルをそのまま持ち込んだ。
招集リストの記事で、互いに自分がやりたいことをやる試合、というようなことを書いたが、その通り、マドリーは「バルセロナ対策」を特に施さないで試合をスタートさせた。
今シーズンこれまで、20近くの試合に臨んで、メンバーもほとんど変えず、一貫したスタイルでやってきたのだから、ビッグマッチでそれを変えたのでは意味がない。自信を持ってやるべしという理由と、そもそもバルセロナ用に変更して90分間持ちこたえるだけのセカンドオプションを用意できていないという理由。
変わらないプランをカンプノウに持ち込んだのには、こうした表裏一体の2つの理由があった。
モウリーニョは積極的にこのプランで臨んだともいえるし、こうせざるを得なかったという言い方もできる。だから、”モウリーニョの狙いは失敗した”という言い方は半分合っていて、半分間違っている。
さて、半分は自信を持って臨んだ試合だったが、やはりバルセロナはうまかった。
最終ラインにはボールを持たせ、中盤で勝負する相手への対応は嫌というほど訓練しているだろうし、実戦でも十分経験済みのバルセロナには、カウンターへの狙いとしてロナウドやエジルを多少温存しつつのプレスではプレッシャーをかけることはできなかった。序盤はベンゼマやエジルが挟み込むことが数度あって、期待できそうな場面もあったのだが。
その意味で、守備を怠った選手はいなかった。ただ、これまで通り、奪った後の攻撃も意識しながらのやり方では、中盤のやり合いでバルセロナを上回ることができないというだけのことだった。
そして中盤にプレッシャーのかかっていない高いラインなど、何のメリットもない。メッシ、イニエスタ、シャビにバイタルをうまく使われ、裏を狙われる。何度かはオフサイドにかかったが、先制点、3点目などはラインがバルセロナ攻撃陣にやられての失点だった。
さらに、奪いどころがはっきりしないディフェンスではまともにカウンターを出すこともできない。
ベンゼマだろうとイグアインだろうと、このやり方ではさしたる差もなかっただろうと思われる。
■マルセロはいかに
バルセロナは、片方のサイドにうまく寄せてから逆サイドへ展開、マドリー両サイドバックとの1対1をうまく作っていた。
そこで、ずっと穴になっていたマルセロ。これまでに比べれば、だいぶマシなプレーをしていたといえる。カルバーリョ、シャビ・アロンソのカバーもあり、彼自身の成長もありで、全然ダメというところからはかなり良くなった。特に相手を前にした時の守りは、随分マシに見える。
が、不運もあったとはいえ先制点の場面ではシャビに前に入られ、2点目ではペドロに先を越された。
特に2点目の場面では、ビジャにボールが入ってセルヒオ・ラモスに仕掛けていくタイミングで一度振り返っている。この時にペドロが後ろにいることは確認できていた。が、中に絞る動きをしたのはビジャがクロスを入れて、ペドロが前に出てきた後だった。
極端に絞っておくことは出来ない場面だが、ペドロの存在を確認していながら、簡単に前に入られるのはいただけない。この失点で試合の流れがほとんど決まってしまったことを考えると、まだまだ改善しなければいけない点が多いというほかない。
■今後へ
今後に向けては、インテルの昨シーズンを参考にするのが妥当なところだろう。
インテルはスナイデルとミリートの縦関係のコンビだけで得点のチャンスを作ることができる点で、マドリーとの差がある。
ミリートとスナイデルのような攻撃を、イグアインとエジルができるようになれば、放り込みもあり得る選択肢になるのだが、今は放り込みではなくクリア、繋ぐことを期待していないロングボールばかりになっている。
両サイドは、随分守備をするようになった。
だから、リトリートして4-4で守備を頑張ってもらって、蹴りだしたボールで前の2枚が勝負できるようになれば、一方的にならず自分たちの時間を作れるし、そうなるとロナウドやディマリアが攻撃で見せ場を作ることもできるだろう。
バルセロナに対しては引いて守ることを前提とすれば、3の中央にいるエジルと1トップが後ろの守備の頑張りにまず応えてあげられるようにならなければならない。
■くだらない行為について
最後にちょっとだけ。
こういう特別なモチベーションがある試合では、特にスペインのような土地柄だとそうなりやすいこともあるのだろうが、相手にちょっかいを出すような行為は良くあることなので気にはならない。
だが、最後のセルヒオ・ラモスのメッシへのキックは、そうした枠からはみ出した暴力で、ばかばかしい、試合にとっても、マドリーにとっても無益な行為であった。
ユーロ、W杯とスペイン代表が成功を収めたが、その代表にはバルセロナから多くの選手が招集され、マドリーの選手もともに戦ってきている。
そうした代表の成功で、スペインという国が少し一体感を持ちだした、というのはよく言われていることだ。
その変化は、マドリーとバルセロナの間にも当然起こっていて、双方のクラブのスターが協力して大きな結果を残したことで、ライバルであっても敵ではない、敬意をもって接すべき最高の相手、という雰囲気が多少なりとも出てきたように思われる。そんな時に、相手のことも自分のことも考えない行為に及んでしまうセルヒオ・ラモスの幼さは、本当に残念だ。
幸い、メッシは大きな怪我には至っていない様子で安心。
こういう行為のないところで雌雄を決したい。
■次節は
次節はバレンシア戦。
地味に厳しいスケジュールになっている。落ち込んでいる時間は少ない。しっかり立て直してもらいたい。