力の差を見せつけられる完敗となった第1戦。ここまでしっかり差が出ると、すっきりするような気持ちにすらなる。
マドリーに足りないものは何なのか、はっきり見せられた試合となった。
■マドリーの先発メンバー
GK:ディエゴ・ロペス
DF:セルヒオ・ラモス、バラン、ペペ、コエントラン
MF:ケディラ、シャビ・アロンソ;エジル、モドリッチ、ロナウド
FW:イグアイン
68分:モドリッチ→ディマリア、イグアイン→ベンゼマ、80分:シャビ・アロンソ→カカ
右サイドはエジル。ディマリアは結局先発できるコンディションにないと判断されたようで、カジェホンかエジルという選択となったと思われる。
■ドルトムントの先発メンバー
GK:ヴァイデンフェラー
DF:ピシュチェク、フンメルス、スボティッチ、シュメルツァー
MF:ベンダー、ギュンドアン;ブワシュチュコフスキ、ゲッツェ、ロイス
FW:レバンドフスキ
82分:ブワシュチュコフスキ→ケール、83分:ピシュチェク→グロスクロイツ、89分:ギュンドアン→シーベル
前日にバイエルンへの移籍が発表されたゲッツェは先発。ブーイングもなく、しっかり応援するスタジアムは素晴らしい。
■攻守に勝れたドルトムント、運動量と質で劣ったマドリー
戦前から、ドルトムントが攻めマドリーが守る展開が予想されていたが、ボールを持つ時間としてはそれほど大きな差は出なかった。
ただ、ボールを持った時の攻撃の質は、ドルトムントが完全に上回っていた。マドリーの2列目にボールが入ると素早く寄せて奪い、これをレバンドフスキに預ける速さがポイントで、マドリーが守備を整えきれない間に、ゲッツェ、ロイスと絡んで仕掛けてくる。
どの位置からでもまずレバンドフスキを見て、楔を入れようという意識が統一されているし、レバンドフスキもそのためにしっかりと準備ができている。ペペ、バランが競りに行っていて、楽にはプレーさせないようにしてはいたものの、ボールを奪うところまではほとんどできず。多くのボールがレバンドフスキに収まってしまうこととなった。
この守備と縦の展開の速さによって、マドリーは攻撃を展開して行くことすらできないまま。序盤はハーフライン付近で奪われては攻められることの繰り返しとなった。
ドルトムントの先制は8分。左からのゲッツェのクロスにレバンドフスキが合わせた。
ゲッツェへのマークが少し遅れたことによって、楽に良いボールを上げさせてしまったことはもちろん問題だが、レバンドフスキが一瞬ペペのマークを外し、ゴール前でフリーになっていたことも大きい。
先制点の後は、ドルトムントが少しプレスの位置を下げたこともあって、マドリーが後方でボールを持てる時間帯が続いた。
マドリーの形としては、シャビ・アロンソに時間を作ってあげて、サイドに展開するのが一番だが、さすがにマークは厳しい。また、ポゼッションの回復地点が低く、あまり効果的にスピードアップできない。
そこで、モドリッチが降りてボールを受け、ショートパスでボールを運ぶ形が増えた。この時、ケディラが前に出ていることが多く、モドリッチと入れ替わるような格好になっていた。ケディラのところは、単純にスキルの問題から狙われていた雰囲気もあったので、後方よりは前の方が少し安心。
ただ、こういう形でドルトムントの守備網をかいくぐるには、マドリーのパスコースを作る動きは全く足りなかった。
技術のあるモドリッチとエジルは1人くらいならかわせるが、ドルトムントの素早いプレスに合わせてスペースでパスを受けようとする動きを継続した前線の選手はおらず、囲まれては奪われるの繰り返しとなってしまった。
また、マドリーにはディフェンスと戦ってロングボールを収められる選手がいないし、そういう回避策を持っていないので、とにかく前へ、ということがやりづらい。
だから、イグアインはあまりボールに触れなかったし、触れたとしても相手に脅威になる形には滅多にならなかった。それはロナウドも同様で、サイドにいる彼1人ではどうしようもない。コエントラン、エジルとパス交換してサイドを崩す場面もあったが、いかんせん回数が少なすぎ、確率から言って得点できそうと感じることはほとんどなかった。
それでも運は回ってくる。
43分、ドルトムントの選手たちが判定に少し気を取られている隙に早いスローイン。縦に繋いだパスはフンメルスにカットされたが、フンメルスはバックパスをミス。
短くなったボールをイグアインが奪い、飛び出したヴァイデンフェラーを良く見てロナウドにパスを出し、これを決めて同点。
全体の流れとしてはとても厳しい状態だったが、前半終了間際に同点とし、望みが出てきたように思われた。
■希望を打ち砕く2,3点目
1-1で始まった後半。
流れに反してアウェイゴールを奪い、希望が出てきたマドリーだったが、ドルトムントの攻撃がマドリーを完全に圧倒した。
2点目は51分、3点目は56分と立て続けに失点。
どちらもシュート性のボールを入れられ、レバンドフスキがゴール前で落ち着きを見せたもの。いるべきところにいて、きちんと枠に決める、ドルトムントにとっては本当に頼りになるストライカー。
やり方を大きく変えたわけではないが、前半の早い時間帯と同様の圧力をかけられ、狙い通りにやられてしまった。
アウェイゴール2つで2-3なら全く問題ないマドリーだったが、余りにも内容が悪く、得点の希望が見えない状態が続いていたためか、浮き足立つ。焦って仕掛けては複数で止められる悪循環で、ますます得点の雰囲気はなくなっていった。
68分にレバンドフスキがPKを決め、4-1と3点差となってからは、ベンゼマ、ディマリア、カカをいれ、スクランブルで攻め立てるが、流れは傾かず。
焦りばかりが目立ち、ドルトムントの守備網の素晴らしさを際立たせるだけの単独突破が続くだけで、決定的な場面は、ロナウドが抜け出した本当に終盤の時間帯くらいのもの。
守備の出来と、前線のタレント、それを操るギュンドアンのような選手の出来の良さで、ドルトムントが快勝。
マドリーはミスをついての得点以外何もできないまま。またもドイツで凱歌をあげることはできなかった。
■はっきりとした差
レバンドフスキのパフォーマンスは本当に素晴らしかった。
PK以外の3ゴールは、どれもゴール前での動き、反応の良さを示している。また、楔を高い確率で収め、2列目と連携していくことのできる技術と身体能力の高さは、マドリーを沈めるには十分なものだった。
上にも書いたとおり、マドリーがボールを収めるところといえばサイドにいるロナウドくらいしかなく、中央で他の選手と絡んでいけるようなポジションではボールが落ち着かない。
これがあるのとないのとでは、ボールが高い位置に進む確率がまず大きく違ってくるし、もちろんそこからゴールに迫る回数も全く違ってきてしまう。
マドリーはボールを運ぶやり方としても、ドルトムントに及ばなかったし、ゴール前で仕事をする質としてもやはり差を見せつけられたというべきだろう。
■気迫を見せろ
ベルナベウで3-0以上の勝利は数字の上では不可能なことではないだろうが、この第1戦を見てその希望を持つことはかなり難しい。
ドルトムントは第1戦と同様にボールを運んでくるだろうから、失点の恐れはあるし、逆に得点の可能性が感じられない。
このドルトムントを完封して3得点をあげるのは至難の業で、まさに奇跡のスコアと言って良い結果を目指すほかなくなったマドリー。せめてホームでは少しでも納得の行く内容のプレーと、諦めない気迫を見せて欲しい。
マドリーは横綱相撲をしがちで、必死にやることにあまり慣れてはいないのだけれど、来週の第2戦では”鬼気迫る”と言える迫力と執念を見せてもらいたい。
もし、早い時間帯で点を取れれば、流れを持ってくることも出来るかもしれない。