ベイルの名前が連日現地紙をにぎわせている中の第2節。中盤の選手は何を思う。
■マドリーの先発メンバー
GK:ディエゴ・ロペス
FW:ベンゼマ
61分:マルセロ→ナチョ、65分:エジル→カゼミロ、88分:ディマリア→カルバハル
ピボーテの数が足りないせいもあって、イスコが一列下がった。その分、エジルが中央に入り、右はディマリア。
■グラナダの先発メンバー
GK:ロベルト
DF:ニョム、ディアカテ、マインス、アングーロ
MF:イトゥーラ、イェブダ;ブラヒミ、ピティ、ダニ・ベニテス
FW:エルアラビ
46分:エルアラビ→リキ、67分:イェブダ→フラン・リコ、76分:ダニ・ベニテス→ブオナノッテ
第1節は勝利したグラナダ。マドリー相手に昨シーズンは勝利を収めており、イメージは悪くないはず。
■昨シーズンのまま?30分過ぎにようやく動き
マドリーの中盤の構成からして、期待するのはポゼッションを高めて中央をショートパスで崩す攻め。ピボーテの2枚とエジルでどうしてもそれを求めてしまう。
だが、最初の30分ほどはまったくその気配がなかった。
マルセロからロナウドに入れて、ロナウドが縦に行くか下げて作り直すかの繰り返しで、昨シーズンと変わらない左からの攻めが続いた。ロナウドが縦に抜けても、中央がベンゼマしかついてきていないこともあり、作り直しても結局同じ左サイドへボールを送る形ばかりで、ピボーテをこの2人にしたメリットを享受できず。
セルヒオ・ラモスからスペースのある右のディマリアへのサイドチェンジが何度か行われていたことと、そのディマリアが1人で突っ込むのではなく、アルベロアなどのサポートを待ってプレーしていたことは印象的で、特に後者は大きな変化と言えるが、このメンバーで期待されるアタッキングサードの崩しは、しばらく見られなかった。
イスコのピボーテ起用は積極的な理由だけでなく、他にカゼミロしかいないという消極的理由もあってのことと考えられ、この起用のために練られたやり方があるとは思っていないし、試行錯誤している中でのやりくりだろう。これにより彼とモドリッチを後方の遠い位置に置いたままでは魅力がないことははっきりしたと言える。
左サイドが主戦場となったので、グラナダはマルセロが上がった裏を積極的に狙っていた。なりゆきとはいえ対マドリーのセオリー通りと言えるやり方だ。人数をかけての攻めはあまりなかったが、マドリーのボール運びが淡白だった最初の30分ほどは、しばしば引っ掛けて速い攻めを展開していた。
マドリーが変化しだしたのは、ロナウドが長い時間に渡って左サイドを離れるようになってから。ベンゼマと並んだり中央や右に進出したりしだしたことで、そのエリアの味方が増え、モドリッチ、イスコ、エジルのショートパスの交換が生きてきた。ピボーテからはしっかりボールが供給されるし、エジル、ロナウドが中途半端な位置に入ってボールを受けるので、グラナダの守備をずらすことが出来るようになった。こういう形が、本来求めたい姿の一部。
一方で、左サイドはマルセロのみとなり、マルセロの攻撃参加は非常に少なくなった。ボールを持っても、簡単に下げるかピボーテに預けるしかない、面白みのない状態。
マルセロの起用のメリットは攻撃参加によって得られるので、こうした状況はもったいない。
陳腐な言い方だが、こうしたところはバランスを取っていくしかない。左でもトップ下とピボーテが絡んだパス交換が出来る距離感を作っていく必要がある。それがないと、今のところどうしても昨シーズンの攻め方をなぞってしまうような印象。
まだまだこれからの時期なので、今後試合を通して改善していくことを期待したい。
■ディマリアの変化
この試合唯一の得点は、ディマリアのクロスから。
ロナウドが抜け出して、トラップは大きくなったもののベンゼマがフォローしてゴールを挙げた。
見慣れた左足のクロスではあったが、先ほど書いたように、ディマリアのパターンが増えていることが好材料。
エジルやイスコ、モドリッチと近い距離で絡もうという意思が見えるし、アルベロアを使うパスも、これまででは考えられないほど増えている。こうしたプレーの引き出しが増えていくと、右サイドでの彼の存在感は増していくことになるだろう。
そして、相変わらず運動量は素晴らしい。60分頃から少しずつ間延びしてスペースができてきた展開の中で、ファーストディフェンダーとしてはもちろん、非常に広い範囲でプレッシャーをかけていた。
こうした貢献は監督が変わろうと重要。1点差の難しい試合の中で、彼の守備面での献身は光っていた。
■カゼミロの効果
マドリーの交代で注目すべきはカゼミロ。
カゼミロは、彼自身というより、まずはイスコが一列上がったことに意味がある。高い位置でボールに触れるようになったイスコは、それまでよりずっと持ち味を発揮できていた。
カゼミロも良いロングパスを通していたし、(ブオナノッテに対するプレーはペナルティを取られてもおかしくなかったが)守備でもイスコよりは貢献でき、終盤のグラナダの攻撃を跳ね返すのに一役買っていた。
イスコのピボーテ起用が緊急的または試験的なものであるとするなら、この試合を見るとカゼミロを入れてイスコを前に出した方が良いと言える。
ケディラではカゼミロのパスは出せない。攻守のバランスを取れる選手として、今後も出番が増えそうだ。
■終盤
イスコが2列目に入っていくつかチャンスは作ったものの追加点はなく、終盤は必死のグラナダの攻めを凌ぐ時間が続いた。
ロナウドが独力でダメ押し点を狙っていたが、60分から75分くらいにかけて彼だけに頼らずきちんと崩せる形が見えてくればと思う。今のところは相手にお付き合いして撃ち合いになっているが、互いに疲れてくる時間帯こそ、ボールを動かして相手の疲労を誘いたいところ。
モウリーニョの遺産の1つであるカウンターでしとめることもあるだろうが、撃ち合えば失点の恐れも高まる。相手のレベルが高いCLではなおさらだ。
主導権を握り続けて終盤に向かえるメンバーがいるし、そういうスタイルを目指しているように見受けられるので、チームとして成熟していってもらいたい。
この試合は最後のところで凌ぐ集中力を見せて、1-0のまま試合終了。
試行錯誤が続く中、勝ち点はとりこぼさなかった。
■期待を持って
実戦でやってみてわかることがある。
イスコが適したポジション、ディマリアの引き出し、終盤の過ごし方・・・こうしたことについて、外部の私たちよりアンチェロッティはより良く把握しているに違いないが、良い点と改善点が明らかになっていることに意味がある。
また次節は少し改善されたチームが見られるだろうという期待感が今はあるので、内容的に停滞していても昨シーズンほどには陰鬱な気分にならないし、多くのマドリディスタもそうだろう。アンチェロッティはそうした雰囲気を得ることに成功していると言える。
まだ2試合とはいえ、勝ち点3をきっちり得ていることも重要。
騒動の種を与えないよう、序盤は何とか結果を出し続けていってもらいたい。
次節はベルナベウにアスレティックを迎える。
難しい相手だが、3連勝と今節より一歩進んだ内容を期待している。