レアルマドリードのある生活

レアルマドリードの応援日記。試合中心にお送りします。

マドリーの移籍市場を振り返る

■スタートは痛恨事から

マドリーの今夏の移籍市場は痛恨の出来事から始まった。

ペペとの契約更新が成立せず、フリーで手放すことになってしまったのだった。

結果としてCLで大きなライバルとはならないであろうベジクタシュと契約したことで、マンチェスターシティやPSGといったあたりに行かれるよりはダメージは少なく済んだものの、元々はマドリーもペペも互いに契約延長に前向きだった案件である。経験豊かでありクラブへの忠誠も確固たるものがあったセンターバックを失ったことはもったいなかったとしか言いようがない。

これを受けて、フランクフルトにレンタルしていたバジェホのレンタルバックを決定。20歳と若いが、フランクフルトの躍進を支え、ユースのスペイン代表でも落ち着いたプレーをしていたバジェホによって、センターバックはセルヒオ・ラモス、バラン、ナチョ、バジェホと4枚体制を維持できることになった。

ペペの移籍は残念だったが、将来が期待できるプレーヤーをすぐその穴埋めに戻せるというのは、クラブの見通しの良さ。その点は評価できる。

バジェホはこれまで負傷で出場時間を得られていないが、今後に期待しておきたい。

■落ち着いて戦力整理

ここからマドリーは落ち着いた振る舞いを見せる。

実力はありつつ負傷がちで戦力として計算が全く立っていなかったコエントランをスポルティングリスボンへレンタル。マルセロの控えであり将来の世代交代を見据えた戦力として、アトレティコからレンタルされていたアラベスで頭角を現したテオを2600万ユーロで獲得した。

サイドバックは、ほとんどナチョがマルセロの次の序列という状況だった。ナチョが平均以上にこなすことで目立っていなかったが、本来2枚揃えておきたいポジションに、若き才能をこの金額で迎えられたことは良かった。

更にU-21の代表戦で評価を高めたセバージョスをベティスから獲得。違約金満額に少し足した1600万ユーロでの獲得となった。

中盤は現有戦力で最も競争が熾烈で、敢えて補強を目指すことに疑問もあり、バルセロナからの関心も伝えられていたことから、そこに割り込むことが優先された印象も強かった。クラブとしては、バルセロナへの横槍を別にすれば、ベテランの域に入ったモドリッチを酷使しなくて済む戦力の確保、将来への投資という狙いがあり、ましてスペイン人ならば契約しない手はなかったのだろう。

また、カンテラーノでテオと同じくアラベスで立場を築いたマルコス・ジョレンテもレンタルバック。カゼミロの控えも確保した。

ただ、彼の加入以降、コバチッチが移籍志願したとの報道もなされるように。実際にそうした話があったかは定かでないものの、チーム内の雰囲気が悪くなることも懸念されるような状況ではあったのだろう。

そこで、昨シーズンから出場機会に不満があり、都度一応の解決を図ってきたハメス・ロドリゲスをレンタルでバイエルンに放出することで人員の整理を図った。

加入時の移籍金が高額で、それをできるだけ回収したいマドリーの思惑があり、移籍は濃厚と見られつつ具体的な動きのなかった状態から一転、2年レンタル後の6000万ユーロでの買取オプションという奇策でバイエルンとの合意を取り付けた。

更に、控えながらチーム2位の得点を挙げていたモラタをチェルシーに8000万ユーロで売却。ロナウドはもちろん、ベンゼマもベテランになりつつある頃合いなので、もう少し粘ってくれればとも思ったが、彼もシーズン中から出場機会について議論が絶えなかったプレーヤー。確固たる先発の立場を求めての移籍は理解できるものだ。

ハメスとモラタの放出で、昨シーズン出場機会の面で最もストレスがかかっていた部分を解決した形となった。

最後に、カルバハルの壁が高すぎ、たまの出場機会でもプレーがなかなか噛み合ってこなかったダニーロを3000万ユーロでマンチェスターシティに売却。

終盤はいいところを続けて見せてくれ、カルバハルの負傷離脱を良くカバーしてくれていただけに、勿体ない思いもあるが、不遇の期間が長かった割にそこそこの値段で合意できたことは、取引としては良かった。

全体として、若い才能を取り入れつつ、出場機会に不満が出そうなところを然るべき金額で売却する堅実さが目立った。

ネイマール移籍後の8月は無理せず

これらの移籍の後でマドリーに残された話題は、デヘアとムバッペくらいとなった。どちらも主力級のプレーヤーで、高額の移籍金を要するであろう取引となる。

そこでネイマールのPSG移籍が起こる。これにより市場全体で評価額が過剰なまでに高まった。

ネイマールを失ったバルセロナは、その混乱の中で穴埋め以上の戦力の上積みが必須となり、オファーを重ねざるを得なくなったが、これまで戦力の整理を図ってきたマドリーは、混乱した市場に敢えて参入する必要がなかったといえる。

ただ、そのことをもってペレス会長が一気に倹約路線にシフトしたと考えるのは早計である。

ムバッペに対しては1億8000万ユーロの移籍金を提示し、一時は合意していたと報じられているし、ネイマール後ではほとんど忘れられたようになっているが、16歳のビニシウスについては総額4500万ユーロ程度の移籍金で獲得が決定している。

かつての銀河系のように偏った移籍を進めなくなったとはいえるものの、支払うべき案件ではきっちり支払う意思を示しているのである。だから、今後も必要な才能であり、それに見合った金額で合意可能であれば、しかるべき額での投資がなされていくのだろう。

ちなみに、ムバッペについては年俸の面で折り合わなかったと報じられている。

ムバッペ側の要求額は、マドリーではロナウドに次ぐ額だったと言われており、年俸による序列を重視するペレス会長としては飲める要求ではなかったのだろう。

この点は、ディマリア移籍やセルヒオ・ラモスの契約延長騒動の折にペレス会長のポリシーが出ていた。移籍金は必要な額を投下しても、チーム内での年俸序列は実績などである程度厳格に守ることにしているのである。

そうした方針で弾き出されてしまうプレーヤーもいるが、今のチームの落ち着きはそうしたことから齎されているとも言え、評価はしておきたいと思う。

さて、マドリーとして実際問題として補強が必要であったのはセンターフォワードくらい。デヘアが騒がれたGKはケイラー・ナバスがいるので、デヘアはプラスアルファの補強。センターフォワードはモラタ、マリアーノを出し、ボルフスブルクでほとんど実績を作れなったマジョラルがレンタルバックとなったことで手薄となっていた。

だが、前述の通りムバッペとは交渉決裂。ネイマールショックの後でその他のプレーヤーに手を出すことなく、市場が閉まるタイミングを迎えることになった。

層を考えればムバッペと契約に至らなかったのは残念(彼は父が代理人である。親族の代理人は条件面でもめがちなので、その点では契約とならず良かったかもしれない)。しかしそこから無理に他のプレーヤーに流れることがなかったのは良かった。ネイマールショック後の8月の状況では、誰に手を出しても過剰な金額を要求されるであろうことは想像に難くない。あまり深く検討していないプレーヤーについて慌てて交渉をまとめてくるよりは、一旦留まったことで、資金を失わずに済んだ。

マジョラルは、ユベントス移籍前のモラタと同じか少し下回るくらいの期待。あのシーズンもベンゼマにかかる負担が大きかった。ベンゼマの役割は9番としては特殊で、なかなかカバーできるものではないが、マジョラルには今シーズンを通して少しでも成長してほしい。

■最後に

ネイマールの移籍とその余波は予想外だったが、7月に概ね戦力整理を終えていたマドリーの立ち回りは結果的にプラスとなった。

フォワードは、CL出場クラブでなければ冬に獲得することも出来るので、年末までベンゼマ・マジョラル体制で様子を見るというスタンスでも行ける。

高額の移籍はなく、ハメス、モラタといった控えにはもったいないほどの実力のプレーヤーを手放したことで、単純な戦力としてはダウンしただろうが、昨シーズン何とか不満を抑えてきたところなので、こうした整理はやむを得ない。

その分若いプレーヤーが増えたので、彼らの伸びを楽しみにしていきたいところだ。