CLではリバプールに対して優位に立っている一方、ラ・リーガでは首位バルセロナとの差が縮まらない。
攻撃が鋭さを失っており、下がる相手を前に効果的なプレーができず点が取れないまま苦しい時間を過ごすことが続いている。
枠内にシュートを飛ばすことにさえ苦労するありさまで、CLとの落差が大きく見えてしまう結果となった。
このように国内で苦戦している理由を、少しだけ整理しておく。
勝負する以前で詰まるビニシウス
マドリーにとって重要なのは、ビニシウスが左サイドで勝負できる環境を作ることである。
いかにして彼にアタッキングサードで勝負させるか。もっといえば、そうなりそうな状況を相手に見せて複数のディフェンスをひきつけ、組織をずらすきっかけを作らせるか。
これができるかどうかで、攻撃の迫力がまるで変わってくる。
ビニシウスへの守備の対応は複数で行うことが基本となってきている。
また、特にリーガでは、守備組織全体が下がっていて、1対2をうまく処理しても二の矢三の矢がすぐに飛んでくる距離にいる相手が多い。
個人での突破はどんどん難しくなっていっている。
その一方で、良いパスを出して寄ってくる相手をはがせる場面も増えている。
「ドリブルするだろう」とほとんどの人が思っているところでパスが出てくる。アウトサイドでのクロスの精度は高くなってきており、ここまで9アシストと数字もついてきている状況だ。
このように、ビニシウスはアタッキングサードで前を向ければ選択肢が多いプレーヤーになりつつある。
ところが、最近の彼はそういう場面になるずっと手前でてこずるようになった。ミドルサードでのプレーでボールを失うことが増えているのである。
高い位置で仕掛けて失敗するならまだしも、勝負するところではないポジションで簡単にボールを失うと、攻撃はリズムを失う。
低いブロックを崩すという難題に挑む前の基礎問題で躓いているようなもので、非常にもったいない。
「最近のマドリーは相手の守備を崩せていない」という論調が目立つが、そういう機会の前にビニシウスが損耗して、ボールを失っていることが、その根っこにあるのである。
MKのコンディション管理とユニットの安定感のジレンマ
W杯後、モドリッチとクロースをこれまでより頻繁に休ませるようになっている。
前回のW杯後のモドリッチのコンディション低下はよく言われていることであり、この教訓を踏まえ、アンチェロッティは全幅の信頼を置く二人をシーズン後半に万全な形で起用できるよう、ピークを調整しようとしているように見える。
そこで台頭してきたのがセバージョス。
ここまでインテリオールの序列を変えられず不遇だった彼が、契約満了を迎えるシーズンついに出番を掴んだのであった。
不屈のセバージョスによる素晴らしい物語であるし、彼個人のプレーも十分なレベル。
だが、不動の二人を頻繁にローテーションさせ組み合わせを変えるようになったことで、中盤のオートマチックな動きが失われたことも確かである。
チュアメニの離脱に際しカマビンガもしっかり穴埋めはできていた。
しかしながら、個人の出来不出来ではなくユニットとしての安定感で考えると厳しい。
CMK時代、指示してしない変化もピッチで判断して勝手にやってくれるとアンチェロッティは述べていたが、MKの二人が揃った時も行われるそうした自律的な判断が今は欠けている。
疲労・・・?
こうしたポイントの原因をチーム全体のコンディション低下や疲労とするのは簡単。
だが、ベティス戦後にアンチェロッティが述べていたように、リバプールで5-2と勝利していたことを考えると、攻撃の不発にやや不自然な印象があるのは確かだ。
もちろん、CL特有のモチベーションがあったのであって、リバプールでの試合が特別だったのだという言い方もできるが、このところの国内での試合との差が大きすぎる印象であった。
アンチェロッティの発言を裏返すと、「リバプールであれだけやれるんだから週末もしっかりやってくれ」という意味にもとれる。
監督としてチームのコンディションは当然把握していて、そのうえで「普通ではない」と言うのだから、原因とは考えられないということなのではなかろうか。
むしろ、「パスが多い」というように個人や小さなユニットのプレー精度に言及していることから、プレー選択の判断にポイントをおいているように見える。
こうした判断のレベルは、疲労に関わりなく最低限のラインとして求めたい部分なのだろう。
そう考えると、ビニシウスの勝負の前のプレーや、中盤のややぎくしゃくした連携に改善のポイントがあるように思えるが、どうだろうか。
リーガは厳しくなりつつあるものの、ここまで我慢してやってきたことがシーズン終盤に結実することを願いたい。