CL出場圏内確保を目指すバレンシアとの対戦。
■マドリーの先発メンバー
GK:カシージャス
DF:セルヒオ・ラモス、カンナバーロ、メッツェルダー、エインセ
FW:イグアイン
58分:ハビ・ガルシア→ファン・デル・ファールト、83分:マルセロ→ドレンテ
ラスの代わりはハビ・ガルシア。その他は相変わらずの構成。
■バレンシアの先発メンバー
GK:セサル
DF:ミゲル、アルビオル、マドゥーロ、アレクシス
FW:ビジャ
56分:シルバ→ミチェル、64分:ホアキン→パブロ・エルナンデス、77分:マタ→ビセンテ
懐かしのセサルがゴールを守る。中盤の前3人とビジャの関係が大事。
■落ち着きがない
ガゴとハビ・ガルシアのどちらかが下がって、ディフェンスラインの前でボールを持つことが多いマドリー。
攻撃的なパスは出ないが、しっかりマイボールを作れるラスがいないと、ここが不安定になる。ガゴはたまに良いパスを出すが、カットされがちで、キープもうまくない。ハビ・ガルシアも落ち着いてボールを持っている感じがなく、バタバタ。
ピボーテの位置から出したパスが取られるか、絡まれてボールを奪われるシーンが何度もあり、マドリーのボールが落ち着かない。
序盤は前線とサイドの選手が効果的にボールを持つことができなかった。
受け手にも問題はあるわけで、パスコースを作ったり、下がって受けたりという気の利くことをしていない。サイドも”待ち”の姿勢だから、ガゴとハビ・ガルシアにとっては出すところがない。
ディフェンスラインにしても同じことで、ロングボール(というよりクリア)が目立つ。
少し前はラウールが一人随分と下がってボールを受けていたのだが、最近はあまりしないのが気になる。
バレンシアはガゴとハビ・ガルシアのところでボールを取れることがはっきりしているから、攻撃がしやすい。
サイドに流れたビジャが基点になって、中盤がボールを受ける形は良い。
特に左サイドでは、ロッベンを考慮に入れなくて良いのでセルヒオ・ラモス1人に対して数的優位を作ればいい。カンナバーロが出てきたら、そのスペースへ誰かが入っていくというイメージが作りやすい。
先制はバレンシア。27分、シルバからビジャ、マタとパスをつなぎ、マタがカシージャスの下を抜くシュートを決めた。エリアの中で楽にやらせてしまった。この狭い地域で、ボールを扱える選手3人を相手に人数が足りていない。
さらに31分、シルバが低く強いシュートを決めて2-0。ちょっとシュートへの対応がいい加減だった。
マドリーは前半枠内シュート0というひどい内容。ボールをキープできておらず、守備から良い攻撃を許しているのだから、2点取られるのも仕方ない。
■バラハで決まり
後半開始時点では両チーム交代なし。
後半の最初はバレンシアの一方的なペース。試合を決めちゃおうとぃう勢いがある。ホアキンはロッベンとタイプの違うドリブルでエインセを翻弄。
58分、ハビ・ガルシアに替えてファン・デル・ファールト。ハビ・ガルシアが、というより、ガゴとハビ・ガルシアのコンビは失敗。
点を取らなければならないので、この位置にファン・デル・ファールトを置いて挽回を狙う。これで少しボールを持てるようになった。
スペースが出来てきて、マドリーのカウンターが狙える感じになってきたところで、68分、パブロ・エルナンデスの浮かせたパスをバラハがボレーでたたき込んで0-3。
素晴らしいゴールで試合の行方を決めた。
こうなると試合の気は一気に抜けるもので、バレンシアは得点王争いの真っ只中のビジャにゴールさせようとパスを集め、マドリーは各々がなんとなくのプレーしかしない。
「諦めない」というコメントはあったが、こういう展開ではモチベーションを保つのは難しい。
マルセロは完全に切れて、危険なタックルをしていたので、咎めを受けてドレンテと交代させられた。
このまま0-3でバレンシアが勝ち、重要な勝ち点3を手にした。
バレンシアの攻撃陣の出来は素晴らしく、控え選手の質も高い。4-2-3-1の3の部分は、誰が出ても高いレベルをキープできるだろう。
■出し手も受け手も
ラスの安定感あってのガゴということがはっきりした試合だった。
ハビ・ガルシアが相棒だと、ガゴがラスの代わりに安定と安心を与えなければならないのに、揃ってこのポジションらしからぬプレーをしてしまってはいけない。
ピボーテの選手が全員若いというのは、今後も続くならこういう面でちょっと怖い。
ラスは落ち着いてボールをさばけるし、デラレが帰ってこられればパスの面でも一気に改善する。ガゴも攻守ともにいいプレーをすることもあるし改善していくだろうが、どっしりした軸がいた方がいいだろう。
最初に触れたような、受け手の問題もこの際考えた方が良い。
これまではラウールがやっていて、負傷中のファン・ニステルローイもうまいボールの引き出し方、受け方だが、彼らベテランがやらなければ誰もやらない。
ラウールがやらないのなら自分が基点を作って周りを活かそう、という意志は全く見られず、それぞれのポジションでボールを待つだけだった。
相手が強くないならば、それでも何とか出来てしまう。
が、互角以上の相手に対しては、ボールを奪う位置も全体的に低くなるし、パスの出所にプレッシャーも強くかかるようになる。そうなった時に、パスの出し手を助け、チームを助ける動きをする選手が、前に余りにも少なく、結果攻撃と守備に分断されてしまい、強豪相手では失点が時間の問題になってしまいがちだ。
気の利く選手を探すか、意識改革をしないといけない。若い選手がもっと走って、いろいろな仕事をしてもらいたいと思うだけに、最近の試合での仕事のしなさ振りは酷いとしか言いようがない。
■最後に一言
バルセロナに敗れて、ほぼ優勝が決まってしまった中で、すべてこれまで通りの意識でプレーできるかというと、なかなか難しかったとは思う。
だが、「諦めない」とコメントした以上は、気持ちを入れ換えて試合に臨んでほしかった。
選挙が控えている以上、まったく変化をしないということはあり得ないのだから、選手個々人はもっと危機感を持ってほしいところだ。
「自分はチームのためにこれだけできる」ということを、残り試合でもっと見せてもらいたい。自分のポジションで良いプレーをするのはもちろんだが、チームのためにどんなことができるのかもプレーで示してほしい。
やりたいプレーをするだけではチームは高いレベルでは勝てないのだから。