レアルマドリードのある生活

レアルマドリードの応援日記。試合中心にお送りします。

リーガ・エスパニョーラ第1節 vベティス

新しいチームの始まり。昨シーズンとは違うものを見せてくれそうだという期待感は、プレシーズンを通して高まっている。

■マドリーの先発メンバー

GK:ディエゴ・ロペス

DF:カルバハル、ペペ、セルヒオ・ラモス、マルセロ

MF:ケディラモドリッチエジル、イスコ、ロナウド

FW:ベンゼマ

55分:ケディラ→カゼミロ、69分:エジル→ディマリア、80分:ベンゼマ→モラタ

確約のなかったポジションであるキーパー、右サイドの2人、そしてピボーテの1人は、それぞれディエゴ・ロペス、カルバハル、エジルケディラとなった。

形は4-2-3-1で、プレシーズンでもぱっとしなかったトリボーテは採用せず昨シーズンの形を踏襲。

ベティスの先発メンバー

GK:アンデルセン

DF:チカ、パウロン、ペルキス、ナチョ

MF:マティージャ、ノサ;ファンフラン、ベルドゥ、セドリック

FW:ホルヘ・モリー

62分:セドリック→フアン・カルロス、69分:ファンフラン→パディージョ、78分:ベルドゥ→ブライアン・ロドリゲス

ゲームを作るベニャトが去ったが、ベルドゥは健在。マドリーがふわふわするところを虎視眈々と狙っている。

■プレシーズンの良さを見失った攻撃

プレシーズンのいくつかの試合では、攻撃の形とリズムが非常に良く、それを保ったままシーズンには入れればアタッキングサードでの手詰まりが解消されるのではないかと、私を含め多くのマドリディスタが期待しているだろう。

この試合においても、ベルナベウということもあり、例えばLAギャラクシー戦のような、ショートパスを繋いでアタッキングサードに進入し、近い距離感でボールを動かして崩す形が見られると思っていた。

だが、そうはならなかった。特に前半は昨シーズンのような停滞がしばしば見られ、ほとんど変化が感じられないような時間帯が長かった。

要因はいくつかある。

まずは、前線のパスコースを作る動きの少なさ。

モドリッチが最終ラインからボールをもらって前を向いた時、良い時は2、3人がショートパスのコースを確保するよう動いていたのだが、この試合ではただ立ってボールを待っていることが多かった。

ベティスはセドリックを前に残し、4-4-2の形で守備を作っていたが、8人で作る2つのラインは非常にコンパクトで、パスを待っているだけではボールはその守備陣の周りをなでるだけ。モドリッチのいる左サイドの狭いところへ簡単に誘導されてしまい、窮屈なところで失敗することが多かった。

もちろん、それでも何とかしてしまう可能性を持つのがロナウドなのだが、チームの志向としてはそれではまったく変化がなく、繋いでいく良さが見出せない。

2つめはケディラの存在。

プレシーズンはカゼミロがここに入ることが多く、ボールを捌く技術の高さと判断の良さを見せていたのだが、ケディラではそれは望めない。

味方もわかっているので、それほどボールを預けないし、ケディラ自身もマイボールのと時から守備に気を遣っているように見えた。

だから、ピボーテで攻撃を作れるのはモドリッチの1人だけという、昨シーズン同様の問題がここでも発生した。

ベティスモドリッチだけをしっかりケアしていれば良く、的が絞りやすい。また、マドリーが左から右に展開するにしても、ボールは最終ラインを経由するなど遠回りしなければいけなくなるので、左右にボールを振ってディフェンスの組織をずらしていくことができない。

効果的にボールが出て行かないしパスコースもないので、ペペが持ち上がってしまうシーンもあったほどで、明らかに思い通りになっていなかった。

精神的な問題ももちろん避けて通れない。

初戦の独特な緊張感は選手のプレーを鈍くする。大きな舞台の経験がある選手とはいえ、年齢的に若くしてやってきたイスコやカルバハルなどにとってはなおさら。

精神的な面がプレーの良さを奪った面はあるだろう。

■方法を忘れてしまい手付かずの守備

そうこうしているうちに、14分にベティスが先制。

カウンターで攻めあがったセドリックに対し、セルヒオ・ラモスが飛び込んでかわされ、折り返しをホルヘ・モリーナがディフェンスと競りながらうまく流し込んだ。

セルヒオ・ラモスが1対1であっさりやられたことが、最終的な局面の全て。あそこで軽々と抜かれてはいけない。

セドリックは小柄ながらスピードがあり、サイドを中心に速い攻めの際にマドリーの守備陣と対決し、かなりの確率で勝利していた。カルバハル、マルセロの両サイドバックは、セドリックの対処に非常に苦労しただろう。

もちろん、こうした形を作られる前の段階での問題はある。

ボールの取られ方は良かったか、その後の遅らせる守備ができていたかどうか、といったことに関してはまだまだ。この場面でも、中央で受けに降りてきたセドリックへの縦パスを簡単に許している。

攻撃がうまくいっていないこともあって、ケディラがエリア内まで走りこむようなこともしていたが、そこで奪われると、カウンターへの備えは薄くなる。

近い距離感で攻めていく以上、昨シーズンのように、極端に言えばうしろに7人が残っているということはあまり想定できない。だから、おかしな取られ方はできないし、前線は取られても遅らせながら帰陣するプレーが欠かせない。

チームとしての守備は発展途上だし、ある程度はやむをえないところではあるが、モウリーニョ期の良さは残しておきたい。強みまであっさりと忘れ去ってしまったのではないかというようなプレーは、早急に改善する必要がある。

■同点ゴールもベンゼマは・・・

マドリーの同点ゴールは26分。

一度詰まった攻撃をケディラ、マルセロ、イスコと落ち着いて左サイドへ繋いでやり直し、最後はスルーパスを受けたベンゼマが左足で決めた。

エリア付近で落ち着いて攻撃をやり直せたことが大事。どこかで楽をしてミドルシュートなどになるのではなく、ボールを動かして確率の高い場所に持っていった。

ベンゼマオフサイドにかかりまくっていたが、この場面でようやく抜け出すことに成功。

オフサイドになっていたということは、彼自身が裏を狙っていたということであり、それに対してエジルやイスコといったパスを出す人がいたということでもあるので、今後に向けて期待こそすれ、責めるものではない。

だが、成功した回数が少なく、オフサイドにかかってばかりというのでは意味がない。

どうしても、ベンゼマが本職のフォワードではないことが原因ではないかと考えてしまう。もちろん今後試合を重ねていけば改善されていく部分もあるだろうが、彼は抜け出す技術に優れているわけではないし、以前から指摘しているように、ゴールを決める最後の場面の技術が特に優秀なわけでもない。

ボールの出し手は、イスコの加入もあってぐっと質が高まった。こうした形でボールが出るのであれば、それをゴールに決めきれる別の形の才能がやはりチームに必要だ。

幸い時間はある。ペレス会長はじめ上層部は、この試合でのゴールへのプレーの質を良く思い返してもらいたいものだ。

■交替の選手たち

マドリーの交代はカゼミロ、ディマリア、モラタ。ポジション争いが熾烈なところが結果的に交代することとなった。

カゼミロが入った55分以降、徐々にオープンな展開になっていったが良さはかなり見せてくれた。ボールを持ってのプレーは、やはりケディラよりずっと良く、良いところへパスを届ける技術は確かなものと思われる。

右は徐々に使えるようになり、カルバハルの攻撃参加が増えて左右のバランスは良くなっていったものの、単純に運動量が足りないので攻撃がうまくいかなかった。

そのうちにロナウドは強引になりだし、全体として縦に速くなって行って、昨シーズンと変わらない内容になってしまった。

その中でディマリアは、少し変化しようとしている姿を見せてくれた。

当然ながらプレーの引き出しがこのオフで一気に増えるわけもないのだが、遠くからとにかくクロスを放り込むとか、味方を使わずにつっかけるようなプレーは避け、アンチェロッティの攻撃の形に順応しようとしている。

これだけ速い展開になると、昨シーズンまでの彼ならもっと淡白だっただろうし、簡単に攻撃を終わらせてしまっていただろうが、それを変えようとしているところは好感が持てる。今後も継続していってもらいたい。

モラタは起用方法としてはちょっとかわいそう。

トップチームでの経験はつみつつあるが、こうした場面で救世主になってくれと期待をかけるのは酷だ。もちろんアンチェロッティも、そうした負担をかけるつもりはなく、この交代はどちらかというとベンゼマを諦めたという側面が大きいと考えているが、もっと精神的にやりやすいところで先発させて長い時間出してあげる方が、トップ登録するのであれば望ましいだろう。

■終盤に勝ち越し

さて、試合は展開が速くなり、マドリーは昨シーズン同様の攻撃でうまくいかず、守備では人数が足りない場面さえ作ってベティスの速攻に苦労を重ねていた。

セドリックが下がった後もベティスのやり方は徹底しており、マドリーの守備のまずさも相まって、チャンスはベティスの方が多かった。

だが、勝ち越しはマドリー。

再三良いクロスを上げながら、ゴール前の質の問題で得点に結びついていなかったマルセロだが、86分のアーリークロスが走りこんだイスコの頭へぴたり。イスコの初ゴールで何とか勝ち越しに成功した。

ヘディングでのゴールは珍しい彼だが、動き出しとヘディングの技術を見せた。

これで彼の立場はさらに磐石なものになっただろう。

勝ち越した後は落ち着いて時間を使っていた。このあたりはさすが。ロナウドの守備を免除するためにトップになり、その分をモラタやディマリアが頑張っていて、交代はここでも割と生きていた。

■まずは第一歩

苦労したが、勝ち点3でシーズンの第一歩を踏み出せた。

内容は、何度か触れたように昨シーズンと大差ないものとなってしまったが、何より結果が大事。精神的にはこれで落ち着くだろうし、新体制の是非といったような面倒な雑音が発生することもない。

プレーの面でも、上述の通り課題は見えているので、手はつけやすい。プレシーズン良かった点を取り戻すように進んでいってもらいたい。

今週はミッドウィークにラウールが所属するアルサッドとのベルナベウ杯が控えている。シーズンが始まった中での親善試合であり、通常であれば内容は薄いものだが、ことラウールの帰還とあって感動的な夜となるだろう。

次節は、グラナダとアウェイで対戦。

現地時間の月曜日開催なので、ご注意を。