レアルマドリードのある生活

レアルマドリードの応援日記。試合中心にお送りします。

アトレティコとの今シーズンの4試合を振り返っておく

今シーズンも残すところCL決勝だけとなった。

天敵とも言うべきドイツのクラブを3つも退け、たどり着いた先で出会うことになったのが同じ街のクラブであったというのはとても面白い筋書きだ。

何年もの間勝ち続け、皮肉な横断幕を掲げる者がいたような関係だったが、相手は瞬く間に変身を遂げ、ヨーロッパの頂点を争う間柄となった。

最も重要な試合を戦うこととなったライバルについて少し学ぶために、シーズンの最後の試合に向けて今シーズンの4回の対戦を振り返っておくことは無駄にはならないだろう。

■リーガ・エスパニョーラ第6節(サンチャゴ・ベルナベウ)

マドリーは4-4-2で臨んだが、アトレティコの4-4を崩すことができなかった。問題は出し手と受け手の両方。

ケディラとイジャラメンディの2人から効果的に楔が入らず、ロナウドがサイドに開いて独力でボールを運ぶしかない展開が繰り返された。

ベンゼマは体を張らず、きれいにボールを受けることを考えるので、アトレティコの厳しい当たりで受け手としてのプレーができず。淡白な攻撃に終始し、アトレティコの守備陣の中に入り込んで行くことがほとんどできないままに終わった。

クロスは入っても、それだけ。これまでのアトレティコ戦のような、何となく点を取れる雰囲気がなかった。

プレシーズンには、ポゼッションして形を作ろうという意図がはっきり見え、モチベーションが高かったこともあって、今後に期待できる雰囲気があったのだが、シーズン最初の大きな試合にもかかわらず、モウリーニョの残り物だけでやっているようで、プレシーズンとの落差が不安に繋がる試合になった。

失点のしかたも悪かった。

低い位置でディマリアが持ちすぎ、奪われてジエゴ・コスタにきっちり。

マドリーはやりたいことが見えず、低い位置で余計なプレー。アトレティコはやりたいボールの奪い方を実践して狙い通りゴールを決めた。

この違いは、この時点でのマドリーとアトレティコの差を端的に表している。昨シーズンから作り上げてきたシメオネアトレティコは攻守ともに整然とチームとして動いていたが、マドリーはそうではなかった。もちろん、個の力の強さはマドリーの強みで、多少噛み合わなくても結果を出してきたのも事実だが、この時点での差はそうしたことではどうにもならないものに感じられた。

■コパデルレイ準決勝第1戦(サンチャゴ・ベルナベウ)

この時期のマドリーは、ディマリアをインテリオールに組み込んだ4-3-3が非常に良く機能していた。

元のポジションに関係なく左サイドの高い位置にどんどん進出し、ロナウドサイドバックとの3人で左サイドで数的優位を作り、出たり入ったりで崩せていた時期だ。

この試合では、最初の対戦時はピッチにいなかったシャビ・アロンソが入り、モドリッチも先発と、今の形にずっと近くなっている。

彼らと、とにかく動き回るディマリアがいたことでアンチェロッティの4-3-3は面白いものになった。

ディマリアも不慣れなはずのポジションでの起用に慣れた。

攻撃はもちろん、普通ならバランスを崩してしまうような形でボールを失ってもポジションに戻るスタミナで守備のバランスを維持することに寄与していた。

この試合ではへセへの左からのアシスト、ディフェンスに当たってコースは変わったものの3点目のシュートと、得点に繋がるプレーを見せてくれたが、この時期からディマリアの良さがはっきり出てきた。彼なしでは中盤が考えられないほどになっているが、その端緒と言える。

アトレティコジエゴを起用したが、かつてアトレティコで見せたほどの輝きはなかった。シメオネのチームの中で求められているリズムとは違うのかもしれない。その後もトップ下で違いを作ることができていたとは言い難く、ファーストチョイスにはなりえていない。

■コパデルレイ第2戦(ビセンテカルデロン

第1戦の3-0を受けての第2戦。

点差がついたこともあって、互いに控えのメンバーを多く先発させた。CL決勝トーナメントが始まる前のタイミングで、全体のコンディションを考慮した結果だったかもしれない。

マドリーは4-3-3でシャビ・アロンソモドリッチは先発したが、ディマリアは先発せずイジャラメンディ。イスコがトップに入る形だった。

イスコのトップ起用は忘れた頃に試される、というような頻度だが、徐々に馴染んではきている印象。

ただ、ディマリア不在のこの形だと、プレーヤーが流動的に動く範囲が限定的になるので、形は維持されて守備はある程度計算が立つが、攻撃が前線頼みになる傾向が強くなる。

ロナウドが15分までに2ゴールを挙げて決着をつけたが、アトレティコはマドリー以上に入れ替えをしており、今回の対戦に向けての参考になる部分は少ない。

先ほど触れたジエゴは、この試合先発したが46分にアドリアンと交代しており、あまり印象がない。

ビジャを欠く場合はラウール・ガルシアが優先されることが、今のチームのやり方を象徴している。

オサスナジダンと呼ばれたうまさよりも、ジエゴ・コスタに次ぐハイボールのターゲットとしてうまく使われている。ジエゴ・コスタや彼に蹴りこんで競らせることからディフェンスをずらし、セカンドボールを拾って早めに攻めきってしまう形は、高さのないバルセロナ相手にも見られた。

彼らがロングボールをルーズにすることで、守備陣はマイボールにしようとずれたり、攻撃を意識して相手を見るのを少しの間止めたりする。その隙を中盤より前のプレーヤーがみな狙っている。

そうしたきっかけ作りになれるプレーヤーとしては、ジエゴよりもラウール・ガルシアのほうが優れており、シメオネがものすごくボールを持つチームを作らない限り、今後もその順番はなかなか変わらないだろう。

■リーガ・エスパニョーラ第26節(ビセンテカルデロン

コパデルレイでやられたディマリアのやり方にアトレティコが対抗できた試合と言える。

マドリーは幸運にも先制したが、モドリッチ、ディマリアが低い位置でも執拗に追い回され、常に判断を急がされた。

普通のチームならば最終ラインに組み込まれるような位置までは追ってこず、そのためにこのマドリーの4-3-3は成功してきた。アトレティコはそれを上回る形で運動量を割き、この形の肝であるプレーヤーを消すことに成功した。

アトレティコのロングボールへの対処は直接的にはそれほど問題にはなっていなかったが、ジエゴ・コスタとラウール・ガルシアが揃った形ではきちんと対処する必要があるところ。

競った後のボールに対する判断を正確にしないと、取れると思って行ってバランスを崩すのが一番まずい。

アトレティコはアルダが2人のマークをうまくかわしてコケが決めた。ここにきてディマリアがマークミス。

前半終了間際にはガビがロングシュートを決めて逆転。アウェイでまずい試合運びをした。

アトレティコがすばらしいのは、この後の後半でペースが落ちることがないこと。時間の経過による疲労もリードした安堵感もあるはずなのだが、前半同様ディマリアとモドリッチに仕事をさせないだけの守りを続けた。

チームとしての運動量とそれを支える精神力は、アトレティコの大きな強みだ。シメオネのマネージメントのうまさを物語っている。

マドリーはそれに対処できず、後半になってもペースは取り戻せないまま。70分過ぎにやっとアトレティコが安全策を取り出したことで攻撃的に振舞えるようになった。

逆転までを考えると時間は短く、ロナウドの同点ゴールがやっと。アトレティコが元気な時間にペースを取り戻す術を見つけないと、アトレティコが自ら下がるまで良いようにやられてしまう。

アウェイとはいえ、後半の立て直しに不安が残る試合となった。

■果たして次は・・・?

今のマドリーの基本的な形は4-4-2。ロナウドか彼が不在ならベイルがベンゼマとともにトップに入って、守備時には最低でも4-4-1がしっかり下がって対応するようになったことで、守備は安定した。

ディマリアがいれば、相変わらずポジションに関係ない動きをして、守備時にはスペースを埋めるという離れ業をやってのけてくれるが、4-3-3の時に比べるとそれほど大胆ではなく、4-3-3の左サイドのような攻撃の大きな強みは薄れたが、一方でバランスが整いやすくなり守備は計算できるようになっている。

マドリーが有利な点は、そうしたことはもちろん、そもそもアトレティコがこの形のマドリーと戦うのが初めてだということ自体がそうだろう。

コパデルレイでの4-3-3に対して、シメオネはリーガできっちり対抗してきたが、逆に言えば初見だった4-3-3はそれなりに機能したということ。良いように考えれば、今回も同様になる、かもしれない。

特に守備については、ジエゴ・コスタ不在となる可能性が高く、流れの中での脅威はぐっと減る。言うまでもなく最初の対戦でのような低い位置での判断の遅れやミスは厳禁。それができれば、真っ向からそうそうやられることはないだろう。

大一番でのビジャの一発や、セットプレーには注意が必要だが、大きな破綻はしないのではないと期待しておく。

その分、攻撃面では工夫が必要になるだろう。

マドリーにボールを持たせておけば良いという流れにならないよう、ボールを持ってアタッキングサードを攻略するつもりでいた方が良い。

そのためには、とにかくプレーヤー同士の距離感が大事。

26節のように前線がばらばらにいるようでは、独力での突破しかありえず、効果的ではない。

スペースのある状態でボールを貰いたがってサイドやトップが前に居残ったり、互いに遠いとコンビネーションでは崩せない。まして、シャビ・アロンソがおらずイジャラメンディが先発濃厚なので、中盤より前の距離感は近めを維持したい。

■最後に

互いに負傷者もおり、最後までメンバーが不確定なところがあるので、最後の情報は招集リストの記事にて。

現段階では今シーズンの4回の対戦を振り返り、簡単にまとめておくに留めることにする。

こうしてみると、4試合でいろいろなことがあった。

5試合目はどんな流れになっていくだろう。マドリーの勝利は期待しつつ、不安と楽しみとの両方がある。こんな時間を過ごせるのも、ここまで勝ち残ったクラブを見てきた者の特権だ。残り3日あまり、そわそわすることを楽しみながら過ごしたい。