最終的には報道の通りとなった。
マドリーはディマリアの移籍についてマンチェスター・ユナイテッドと合意に達したことを公式に発表した。
報道によれば移籍金は7500万ユーロと1500万ユーロのインセンティブ。
ディマリアとユナイテッドは5年契約を結び、年俸は現行の350万ユーロから800万ユーロになるとのこと。
マドリーは最終的に600万ユーロの年俸で契約更新のオファーをしたが、ディマリアはそれを受け入れなかったとも伝えられている。
彼は疑う余地なく昨シーズン最大の功労者の1人であり、昨シーズンのプレー振りを考えれば契約を更新し残留して欲しかった。
ロナウドをはじめコンディションが整わないプレーヤーが多く、新加入のハメス・ロドリゲスもフィットするにはまだまだ時間が必要という中で、昨シーズンの中心的なプレーヤーだった彼を失うダメージは大きい。
彼の契約については、かなり以前から改善を求めていると報じられてきており、この夏に降って湧いた話ではなかった。
もちろん、彼が求めていた800万ユーロという額は昨シーズンの活躍がなければ出てこないものではあるが、いずれにせよ現行の契約に不満があったことは確か。にもかかわらず、W杯後の短い期間に交渉して解決しようというのはちょっと虫が良すぎる。もしかすると金額的には600万ユーロでも契約に至る可能性があったかもしれないが、なかなかテーブルにつかないクラブ側の態度に辟易してしまったのかもしれず、だとすると非常にもったいない話だ。
一方、ディマリアのものだという文章によれば、「多くのことを考慮したがそのほとんどは年俸とは関係ないものだった。」とのことだが、プロである彼らにとって年俸は最も重要なものであり、評価の基準でもある。それとは関係ない移籍だという言葉が全くの真実であるとは思えない。この文章の中にディマリアの本心が反映されていないとは思わないが、かといって全てが本心であり、何の制約もない個人的な感情の吐露と捉えるのもナイーブ過ぎるだろう。
移籍や契約交渉もプレーヤーやその代理人にとってはビジネスで、余計なことをして利益を失うわけにはいかないのだ。
これに書かれている内容はディマリアのイメージをうまく守るものになっている。金銭的な条件で折り合いがつかなかったことを矮小化し、クラブの扱いが公平ではなかったと訴えれば、クラブがプレーヤーに対して誠実ではなかったから移籍せざるを得なかった、と印象付けることができる。
上で触れたように、マドリーが早くから交渉していればとの思いは私にもあり、クラブの扱いが公平だったと言うつもりはない。だが、ビジネスとしての交渉において条件が折り合わなかったのだという単純な事実を考えた時、今回契約更新に至らなかった原因はどちらか一方だけにあるのではない。双方に歩み寄る必要があるのに、どちらもそれをしなかった結果だ。
どちらも歩み寄れないままに重要なプレーヤーを失ったことは残念でならない。
とはいえ、いつまでも過去を振り返っているわけにもいかない。
大きな移籍金を残してくれたこともまた、マドリーへの貢献だ。彼の最後の置き土産を存分に生かし、フォワードをはじめチームの強化に向けて移籍市場でできることを検討してもらいたい。