レアルマドリードのある生活

レアルマドリードの応援日記。試合中心にお送りします。

リーガ・エスパニョーラ第26節 vアトレティコ

バルセロナの状態を考えると前節時点でリーガのタイトルはほぼ不可能。もちろん心情としては大事にしたいデルビーだが、個人的にはそれ以上のモチベーションが見出せない状況での試合。

■マドリーの先発メンバー

GK:ケイラー・ナバス

DF:カルバハル、バラン、セルヒオ・ラモス、ダニーロ

MF:モドリッチ、クロース;イスコ

FW:ハメス・ロドリゲス、ベンゼマロナウド

46分:ベンゼマ→マジョラル、57分:ハメス→ルーカス・バスケス、70分:イスコ→ヘセ

マルセロの代役はダニーロとなった。ナチョの方が無難だろうと思うのだが、ダニーロがしばしば使われる。

アトレティコの先発メンバー

GK:オブラク

DF:フアンフラン、ゴディン、ヒメネス、フィリペ・ルイス

MF:サウール、ガビ、アウグスト、コケ

FW:トーレス、グリースマン

77分:アウグスト→クラネビッテル、81分:トーレス→コレア

2位アトレティコバルセロナを追うには勝ち点差が離れている。得点力に課題とのことだが、それでも勝ちきるのがシメオネアトレティコ

■全く崩せず

アトレティコは2トップも含めて自陣でブロックを作る形。マドリーがアウェイで苦しめられてきた高い位置からのプレスはなく、後方でのポゼッションには余裕があった。ハーフラインは問題なく超えさせてくれるので、相手陣内で長い時間ボールを持ち、前半は70%近い支配率で推移した。

アトレティコのように統率されたチームがプレスをかけてくると、これまで以上にボールを運べず、ショートカウンターでチャンスを作られるだろうと思っていたし、反対にマドリーがどの程度対応できるかを見たいとも思っていたので、後方が苦労せずに済んだことは良かったとも思いつつ、残念でもあった。

だが、さすがにヨーロッパ随一の守備の錬度を誇るアトレティコ。ブロックは強固でマドリーの攻撃がその中へ入っていくことはほとんどできなかった。

こうした場合、サイドを広く使って守備陣形を動かさせ、スペースを作りたいところ。

マドリーの定石は左サイドで細かくボールを動かし、そこからセルヒオ・ラモスやクロースが右に展開してカルバハルやベイル、ハメスが広いスペースで勝負する形だ。

これには左に守備を寄せられるだけの脅威がある必要があり、ロナウドとともに狭いところでボールを動かせるマルセロの存在が不可欠だったのだが、残念ながらこの試合は不在。ダニーロはこれまでより積極的で良いプレーをしていたが、利き足と反対サイドでもあり、マルセロのような狭い局面での絡みは難しかった。

こうしたことから、左サイドにアトレティコの守備を集中させることができず、展開してもアトレティコは問題なくスライドして対応できるため、右でスペースを得ることはできなかった。そうなると、アトレティコのブロックは周りをボールが動くだけとなってしまう。

ベンゼマが中央で楔を受ける回数も少なく、ブロックの中に侵入して崩すこともできず。彼は最初からコンディションが良くなかったのかもしれず、前半で交代となってしまった。

他にブロックの中へ入っていけるのはモドリッチくらい。彼は安定して何人かをはがしてボールを進めることができ、どの試合でも信頼できる。とはいえ、低い位置から持ち上がる彼1人では限界がある。そこから周囲に捌いても攻撃のスピードを上げ、守備にズレを作ることはできなかった。

組織として相手を崩せない時に、独力で突破してしまうのも1つの解決策ではある。長いシーズン、どうしてもうまくいかない試合の1つや2つは必ずあるもの。まして上位との対戦となればじりじりする展開が続くことが多い。

そうした時に個人で何とかして得点を挙げ、勝ち点3に繋げることも必要。CLとリーグの両方を狙うようなクラブは、そういうことができるプレーヤーと契約するために大金を用意するものだ。

マドリーで言えば、その筆頭は間違いなくロナウドだ。どこからでも点が取れ、年間50ゴールを期待できるプレーヤーは他にはいない。

だが、彼も徐々に変化してきている。

若い頃はドリブルで相手を引き連れながらコースを作ってロングレンジでも決めてしまうような、相手のブロックの外からでも点を取れるプレーがしばしばあったが、最近は単独でゴールを決めるより、周囲からアシストを受けてきっちり決める形が多くなっている。決めるべきところで決めているのはさすがというほかなく、現時点でのゴール数だけを見れば文句をつけることはできない。

しかしながら、周囲との関係でゴールを決めているということは、「自ら生きる」のではなく「周囲から生かされる」プレーヤーへと変わっていっていることを意味する。それは、組織対組織で手詰まりになった際に何とかしてくれることを期待できるプレーとは相容れない。チームが停滞すると彼も同様に停滞してしまうからだ。

その意味でロナウドは、この試合のような展開になった時にひとりでチームを救ってくれることを期待していいプレーヤーではなくなりつつあると言える。

■刷新が必要

ハイプレスへの対応も進んでおらず、また実力のあるチームがしっかり構築したブロックを壊す形も作れないということは、今のマドリーの力、チームとしての錬度はその程度だということだ。シメオネが何年も継続して作り上げてきた理念とそれに基づくチームに、発足してたかだか2か月程度のマドリーが比肩すると考えることに無理がある。

アトレティコの守備に対し攻撃がうまくいかないだけでなく、焦れてミスをし、先制を許して引き分けさえままならなかったということも含め、現時点での力関係は結果どおりということ。展開の違いこそあれ、CL準決勝クラスのクラブと戦えばこれくらいの力関係で敗れるだろう。

ただ、それはジダンが有能な監督ではないということを意味するわけではない。

プレシーズンもなくチームを引き継いで、前半戦とは全く異なるスタイルを志向している中で、ある程度結果を出しつつ、良い内容の試合も作れていることは事実だし、プレーヤーから信頼を得る力は彼の大きな強みだ。エゴの強いプレーヤーたちを気持ちよくプレーさせることが重要なのは以前から指摘されていることで、その点ジダンアンチェロッティからも学び、彼の強みを大いに発揮している。

リーガも事実上可能性が潰え、この試合を見る限り短期間によほど大きな進展が見られない限りCLも優勝には届かないだろう。それはもちろん残念なことだ。だが、厳しいシーズンになることを承知で1月に監督を代えたのだ。今シーズンはジダンのための助走と捉え、彼の能力を発揮する土台をきちんと作ることに専念しても良いのではないだろうか。

チーム作りも同様だ。

タイトルを狙うためには、チームとしてうまくいかなかった時に何とかしてしまえるプレーヤーが不可欠で、以前はロナウドがその役を担っていたが、加齢など原因は様々だろうが彼が少しずつスタイルを変え、「生かされる」プレーヤーになってきている以上、その代役は早急に探していく必要がある。

ベイルがそのまま収まれれば良いが、彼も本来的にはスペースが必要で、この試合で見られたような展開では効果が薄いし、怪我がちで計算しづらい。メッシほどは望めないにしても、怪我が少なく狭いスペースでも何かを起こせるプレーヤーを加えられれば、ジダンはやりやすくなるだろう。

この試合で、そろそろロナウドのチームからの変革が必要かもしれないとの思いを強くした。

順序としては、まず来夏に任期が切れるペレス会長のやり方そのものが問われるべきだろう。

補強禁止処分は今夏と来年の冬だが、上訴によって来年の冬と夏にずれこむと思われるが、そうであれば、来夏に会長選挙をして会長交代があったとしてもそのオフに補強して新たな体制で臨むことはできない。そのため、タイミングとしては恐らく無冠に終わるであろう今シーズン終了後に辞任し、改めて信を問うべきだ。

経済面の発展は疑うまでもなく、その功績は称えられるべきだろう。だが、スポーツ面での成績がそれに見合うものになってこなかったことは事実であり、第2次政権の中心プレーヤーであり続けたロナウドがもしかするとその役を担えなくなってきているのだとすれば、トップから刷新し、SDの設置も含め現代的な組織によって新たなチーム、新たな流れを作ることを目指すには良い頃合いと言っていいのではないだろうか。

良くも悪くもペレス会長は自身では変われない。このままでは今の状態から脱却するタイミングを失ってしまう。強くなったアトレティコに、当然と言える敗北を喫し、チームというよりもクラブそのものの変革が必要であることを改めて感じた試合となった。