代表ウィーク明け。
いつも良い予感がしないタイミングだが、今回はいい結果で首位をキープした。
■マドリーの先発メンバー
GK:クルトワ
DF:カルバハル、ナチョ、アラバ、メンディ
MF:カゼミロ;モドリッチ、クロース
FW:アセンシオ、ベンゼマ、ビニシウス
71分:ビニシウス→ロドリゴ、80分:モドリッチ→イスコ、ベンゼマ→ヨビッチ、クロース→カマビンガ、83分:アラバ→バジェホ
ミリタンが休養。右のエストレーモはアセンシオとなった。
■グラナダの先発メンバー
GK:マクシミリアーノ
DF:キニ、ビクトル・ディアス、ヘルマン、ネバ
MF:ルイス・スアレス、ゴナロン、モンチュ、プエルタス
FW:ロチーナ、ソロ
46分:プエルタス→モントーロ、58分:ビクトル・ディアス→トレンテ、ロチーナ→ホルヘ・モリーナ、ゴナロン→イスマ・ルイス、78分:ソロ→エスクデロ
ここまで複数得点できた試合が6節ラ・レアル戦、12節レバンテ戦のみ。
残留争いに参加してしまいそうな位置にいる。
意外と前から行く
ビニシウスの決定力と後方からのロングボール供給力のアップによって、速攻の形が確立されてきた一方、相手に出てきてもらって受ける守備のやり方までは未整備なのでは?という話を先日書いた。
代表ウィーク明けはコンディションが悪いことが多い。
走れないので、相手に下がられると足元で受けてばかりになってしまい、ボールは守備陣形の外側をうろうろするばかりの状態はお馴染みである。
こういう事態を避けるため、相手に出てきてもらう展開を指向するのかと思っていたが、予想に反し前から追う形となっていた。
グラナダの4-4-2に対し、マドリーは4-1-2-3で、インテリオールのどちらか(主にモドリッチ)が前線に参加して同数となり、プレスのスイッチを入れる、少し前までよく見られたやり方だ。
しかし走れない恐れが強い代表ウィーク明けでそれを選んだアンチェロッティ、実現させたプレーヤーのどちらもすごい。
それにしてもモドリッチのエネルギー源はどうなっているのだろう。
代表戦でもフル稼働して帰ってきているのに、運動量に何の問題もないどころか、どこにでも顔を出していた。
右サイドでプレスを受けたら下がってカルバハルと連動して剥がしたり、前に走ってディフェンスを引っ張ったりしてサポート。
ミドルサードではポジションを変えながら展開にリズムをもたらし、アタッキングサードではゴールに向かう積極的なプレーで前線を助けた。
ロシアW杯後は如実にコンディションを落とし、年齢相応とも思っていたのだが、お見逸れしましたという外ない。
これだけの運動量が必要な仕事を担えるプレーヤーはそういない。それでいて、疲れて判断が悪い、精度が落ちるといったところを全く見せないのだから、俄かには信じがたいレベルだ。
モドリッチは老いることなく、今もなおマドリーにパワーをもたらし続けてくれている。
そんな彼に引っ張られるように、前線の守備は活発であった。
パスコースを失ったグラナダが序盤からミスしてくれていたという成果も挙がっていたので、前からはめに行く形のイメージはつきやすかったという面もあるだろう。
先制点は下がってボールに寄せに行ったビニシウスの守備から。
ボールを回収し、クロースが出したスルーパスに走っていたのは右のアセンシオ。利き足でない右足でのシュートだったが、マクシミリアーノのセーブを破った。
ビニシウスの守備参加はもともと計算できる。
最近はシャフタール戦のように、取りに行く判断もいいし、スピードがあるのでボールを持つ側の予想を上回って届いてくるイメージがある。
この場面では、彼がうまくひっかけたところからの出し手と受け手の判断の速さが光った。
相手の前に出てシュートまでの道筋を作ったアセンシオは、逆足サイドでこれができればと皆が期待していたプレーであった。
25分にはコーナーから追加点。
ショートコーナーでモドリッチとクロースがワンツー。クロースがニアに入れたボールにナチョが合わせた。
普通にクロスを入れてもあまり得点の可能性が感じられない昨今。
ショートコーナーで守備のずれを作るとか、そもそもクロスを意図していないようなコーナーが増えている印象ではあったが、このようなデザインされたセットプレーはマドリーでは珍しい。
グラナダは・分にルイス・スアレスのミドルが決まって1点差に。
ナチョに当たってクルトワにとってはノーチャンスだった。
グラナダは前述の通りパスミスがしばしばあって、重心が高かったマドリーの裏を狙うのが難しい状態になっていた。
2点差となってからこのゴールまでの時間帯はマドリー陣内にボールを運び、積極的にボールを奪うプレーができていて、本来はこれがやりたかったのかと思われた。
思い通りでなくても形は作る
1点差となっての後半。
2失点後にグラナダが開き直って出てきた流れを汲んで、マドリーは受けに回る展開。速攻を狙える形となったように見えたが、試合後のアンチェロッティの発言を聞くと、前半のうちからエンジンを切ってしまったようである。
気になったのは、守備への入り方よりも、ボール回収後の攻めのアクセントのなさ。
最近見られていたようなロングボール一本でビニシウスを狙う形はなかったので、グラナダが出てきやすい状況になっていたのと、ここというタイミングでカゼミロが関与していたことが何度かあって、思い切った展開を作れなかった。
後者についてはグラナダがクロースやモドリッチを消していたという見方もできるが、前者は自分たちの意図の問題。相手陣内でプレーしていた前半からの切り替えがうまくいかなかったというべきだろう。
それでも56分、グラナダの波状攻撃が切れたところから速攻の形が実現。
ベンゼマが楔を受け、落として縦に走ったベンゼマがカゼミロのスルーパスを受ける。
・がハムストリングを痛める運もあり3対2となって、ベンゼマからフリーのモドリッチへ。マクシミリアーノが出てきたのでビニシウスへプレゼントパスを贈り、3-1とした。
何度かあったベンゼマへのボールからの速い展開がようやく実を結んだ。
グラナダのボールの失い方は特別悪いものではなかったが、押し込みバランスを崩して攻めている時に、カゼミロが余裕をもってベンゼマを見てボールを出せる状態を作ってしまったのは痛恨。
そして、ここでもモドリッチが関与しているのは特筆に値する。機を見て出ていく判断、最後のパス選択と、素晴らしいプレーだった。
再び2点差となって、今度はグラナダの集中力が落ちた。
良かった時間帯のようにセカンドボールを拾えなくなって、緩く攻め合う格好となったこと。このことにより、個の質で上回るマドリーが局面で優位に。
得点シーンまでは割とおとなしかったビニシウスがのびのびプレーするようになって、捕まえられないフラストレーションからモンチュが危険なタックルで一発退場となり、勝敗の行方は決まった。
・分にメンディが裏抜けから流し込み、ケーキにイチゴを乗せた。ラインから出ていく動きがフォワードのように手慣れていてびっくりであった。
最後に
1点差になってチャンスがあったグラナダが出てきていた時間帯に裏を狙うプレーが組織的に狙えなかったのは、アンチェロッティが指摘した通り。
前半の形から切り替えるような試合もできれば、相手によってスムーズに対応を変化させることができるようになるだろう。
チームとして狙う形は作れなかったので、得点シーン以外でのビニシウスの見どころの多くは独力で作ったものだ。
逆説的だが、それがかえって彼のドリブル能力の高さと安定感を際立たせている。
組織として彼を生かす形はなくても、スペースがある場面では勝負して勝ててしまうのだ。昨シーズンまでもドリブルは優れていたが、それしかなかったがために時に無理な仕掛けが見られていた。
今シーズンはドリブル以外でも仕事ができているため余裕があり、勝負すべき時に勝負しているので、「仕掛ければ抜ける」状態になっている。
ゴール前での自信が得意なプレーにも相乗効果をもたらしているように見える。
チームとしてはミリタンを休ませ、主力も交代で多少なりとも余裕を持たせられた。
CLはモルドバ遠征となり、また移動となる。
休める時に休んでほしいし、クリスマスまで負傷者が増えないことを祈っている。