エンバペとの契約に至らなかったマドリーは、モナコからチュアメニ(8000万ユーロと2000万ユーロのインセンティブと報道)、チェルシーからリュディガー(フリー)を迎えた。
エンバペに代わる前線の上積みは今のところないが、これらの契約によってチームはどう変化していくのだろうか。
チュアメニと右エストレーモ
30歳を迎えたカゼミロには明確なバックアッパーはいなかった。
万が一の時カンテラーノのブランコが入ることになっていただろうが、力量の差が大きいのは明らかだ。長期の離脱がないままシーズンを終えられたのは幸運であった。
チュアメニはこの空白を埋める存在と捉えられている向きもあるが、これまでのプレーの断片を見る限り攻守に動くタイプで、マドリーではインテリオールの方が収まりはよさそう。
守備の多くを担っているがゆえに、攻撃に出ていくとバランスの乱れに繋がるカゼミロのポジションを引き継ぐには、彼自身のスタイルかチームバランスの変化が必要と思われる。
また、移籍金額の高さは彼を先発として戦力化する要因となる。
出場時間を減らしてシーズン全体を見据えたマネージメントをする必要性がより高いのは、カゼミロよりもモドリッチとクロースの方であるから、まずは彼ら二人に代わって先発させる機会を作り、チームに組み込んでいくことになるのではなかろうか。
カマビンガは途中から入って流れを変える役割を果たしたが、チュアメニは彼よりも年齢も移籍金も上。一歩踏み込んだ形で使われると考えるのが自然である。
昨シーズンの後半の課題は、チュアメニについて想定されるプレーをしてほしかったバルベルデが右サイドで居場所を得たことであった。
バルベルデを中盤に回すと、右のエストレーモは攻撃的な使い方をしたいロドリゴ、アザール、アセンシオしかいなかった。
攻守ともに強度を上げられるバルベルデに右サイドをカバーしてもらい、中盤が苦しい時にカマビンガを途中投入する。これしか選択肢がなかったのである。
チュアメニが加わったことで、この問題は解決される。
すなわち、バルベルデのエストレーモ起用を維持しつつ、先発インテリオールの入れ替えが行えるようになるのだ。
中盤はCMKとチュアメニ、カマビンガの5枚を基本とし、必要に応じバルベルデ。
そうなると割を食うのはロドリゴの控えとなっていたアセンシオとなる。
CLでの活躍でバルベルデとロドリゴが引き続き序列上位になるのは当然で、アセンシオはスーパーサブ的な立場もロドリゴに奪われた格好。
契約が残り1年となったタイミングでもあり、移籍を前提にオフを過ごすことになるだろう。
このように、チュアメニの加入は、中盤とともに右エストレーモの序列にも影響を与えると考えられる。
リュディガーと左ラテラル
リュディガー加入も、彼のポジションであるセントラルに留まらない変化をもたらす。
昨シーズンのコンビであるアラバとミリタンは、セルヒオ・ラモスとバランのコンビから入れ替えてタイトルを獲得したことで、新しいマドリーの象徴の一つとなっている。
実力はもとより、そうしたイメージを持つに至った二人をサブにするとは考えづらい。
よって、リュディガーとミリタンをセントラルとし、アラバを左ラテラルとする形を基本とするのではないだろうか。
左ラテラルも、昨シーズンなかなかうまくいかなかったポイントである。
メンディが頑張っていたポジションであるが、メンディはジダン期に比べると輝かなかった印象。
攻撃での貢献があまりなく、終盤の大きな試合では流れを切ってしまうプレーも散見された。守備の安定感があるからまだ良かったものの、総合的に見ると平均点といったところで、長所になっていたとは言い難い。
メンディの序列は動かさず、安価な若いラテラルを加える案が報じられていたが、それではメンディの序列が固まってしまう。
アラバに競争相手となってもらい、この部分のレベルアップを図ってもらう方が望ましい。
懸念はアラバのコンディション。
昨シーズン終盤に引き続き怪しい状態が続くようであれば、更なる補強を考える必要があるだろう。
まとめ
このように、チュアメニ、リュディガーの加入は、他のポジションにも選択肢をもたらすものと言える。
アンチェロッティの傾向として、シーズン序盤は色々試してみる時期だ。
そこで新しい形の基礎を作れれば、それを元に、少人数でありつつも昨シーズンよりもやりくりのしやすいチームになるだろう。